04日 5月 2018
「ア"、ぁ、グ……!」 器用で細い指先が、俺の喉を締めていた。 上手く気道だけを塞いだ親指のおかげで、1分とかからず酸欠に陥る。 だんだんと苦しさが気持ちよさにシフトしていく感触に、顔が熱くなった。 銃じゃダメなのか? ほんの2日前の夜、俺が尋ねるとあいつは手首を振った。 五右衛門や不二子が気づいちまうだろ、そしたら計画はおじゃんだ。...
05日 4月 2018
明かりの消えた部屋の中で、ほんの2秒だけライターの火が灯った。 丸く顔を照らされた男はベッドに座り、雲と同じ色の息を吐く。 傷を隠した胸が、ほんのりと淡い月の光に照らされていた。 「月に行こうぜ」 開いた窓の彼方に見える白い石を見て呟く。 「何言ってんだ。アポロはとっくに廃止されてんだぞ」 「それは国のお偉いさん方が決めただけのことだろ?」...
07日 3月 2018
その年の日本の夏ほど、暑く眩い夏は初めてだった。 俺は東京のとあるアパートの一室で、扇風機一つでうだるような暑さ耐えしのいでいた。 ぼんやりと底のない青い空の中に、真っ白な雲がどこかへ流れていくのを帽子と視界の狭間から見ていた。...
06日 3月 2018
「次元ちゃん」 食事を終え、風呂を済ませた後のソファーの上。 ルパンが俺の指に白く長い指を絡ませてきた。 俺のくすんだ肌色とは違い、白人の肌には黒い毛がよく目立つ。 男の手だ。そんな当たり前なことを感じながら、握られた力を返さず見つめる。 指は例えるなら、愛を紡ぐ器官だ。 愛しい人に触れた時に出る赤い糸を、指先で紡いでいく。...
06日 3月 2018
<5> 「生きて帰ってくるとはな。流石は世界一のガンマン…死神に愛された男とはよく言ったものだ」 赤龍が玉座に踏ん反り返り、愛人の女達を弾除けと言わんばかりに増やして侍らせていた。 俺はその玉座の前に立ちすくんだまま、イミテーションのダイヤを放り投げた。 ガラスの砕ける無残な音が部屋に響く。...
06日 3月 2018
次元大介の鎮魂歌 for Inflexible heart <1> 思わぬ男と仕事をした。 今まで毎日のように熟してきた殺し屋の仕事ではなく、泥棒という仕事を。 俺が何の覚悟もなく出した予告状に対して、奴は確実に、そして鮮やかにお宝を盗み出してみせた。...
06日 3月 2018
**2** 「俺もヤキが回ったな」 海王博物館と名のついた、細長い弁当箱のようなコンクリートの箱を見下ろす。 箱の真ん中には筒がついていて、その天井はドームになっている。 まるでインターホンのような形だ。 博物館はここからは小さく、その周囲は怒れるパトカーの赤い海だった。...